自遊通信 No.58(2014 新年)

発 行 自遊学校 文/河原木憲彦 絵/野口ちとせ



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僻地の海辺に住んでいると話すと「星がきれいでしょ」と言われる。確かに。特に冬は。宇宙船に乗って船窓から宇宙を眺めている気分。うっとりするが、長くは見ていられない。広い校庭は寒くて風邪ひきそうな。

先日、来校者に訊かれた。
「25年ですか。長いですね。どうしてまたここに?」
誰もが不思議がる。こんな僻地の古びた廃校に住んでんの? そうね、そうそう、そう言われて思い出した。
当時東京に住んでいた。もう30年以上も前、ふと思った。
「そうか、もしかして他の人に迷惑をかけなければ自分がしたいことをしてもかまわない? 他の人と同じようにしなくても、なにも問題ないのか。そーか、そーか」

27歳の時だった。そのとき生きる方向が変わったことを感じたので、はっきり覚えている。その頃出版社に勤めていたが、海辺の田舎に引っ越そうと決心したんだった。実現するまでには10年かかったが。
そして四国の端っこ、海を隔て向こうに九州が見える、過疎の小さな漁村の崩れかかった廃校に住むことに。気がつけば25年も。これは私の1か所在住最長記録。2年前から猫のジャンコが加わった。焼き芋を食べているとジャンコが寄ってくる。焼き芋好きの猫は珍しいかも。
「ジャンコ、ハッピーニャーイヤー」
ジャンコは後足で耳を掻いてから、大きな欠伸をした。これ去年も言ったか? そうだなジャンコ、今年は次のステップに進もうか。

芋食えば猫と目が合う年始め




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