自遊通信 No.57(2013 夏)

発 行 自遊学校 文/河原木憲彦 絵/野口ちとせ



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明日から雨になるというのでサツマイモの苗をさした。この辺は平地がないから耕地は段々畑ばかり。この村を通る唯一の道路は一車線の狭い県道で、その道路沿いの斜面に石垣で営々と築いた段々畑は100年以上前に当地の先祖が全て人力で造ったもの。その斜面の中程の段々畑2枚(100坪ほど)を今年から借りたのだが、畑からの帰りがけに村人から思いがけないことを聞いた。その斜面の段々畑は作り手が無くなって今年作るのは私とIさんだけだ、と。てことは殆ど荒れ地になるってこと?
「みんなトシじゃからな。Iさんなんか85歳なのによくがんばりよる。Iさんがやめるまでは、わしも続けようかと思うけんど、もうしんどいけん畑は毎年減らしちょる。」
そう言う村人は83歳。過疎地の老人は元気な人が多い。80歳過ぎて畑に出て働いている人はたくさんいる。しかし後継者はいない。あと10年もしたら段々畑は草木に覆われ殆どが山に還るだろう。

明るい話題(?)も。
しばらく行方不明だった飼猫のジャンコが先日ひょっこり帰ってきた。実はその前日ジャンコの夢を見た。ジャンコと私が水中マスクを付け近くの海で泳いでいる夢。ジャンコはネコカキではなく人間のように手を横に広げバタ足ですいすいと水中を泳いでた。水深2メートルぐらいの所に赤い大きな テーブルサンゴがあったので近寄って見てたら、その下から真っ黒な墨汁みたいなものが出てきて海中がにわかに暗くなった。何事?と思うまもなくイボイボの付いた触手がサンゴの下から伸びてきて象ほどもある巨大な蛸が現れた。たまげた我々は一目散に逃げたが、途中で離ればなれに。ジャンコの名を呼びながら探しているうちに、目が覚めた。後日この夢のことを話したらツレは大笑い。
「メルヘンチックな夢ね。」
メルヘンどころか、怖くてちびりそうだったけど、それは言わなかった。 なにはともあれ、お帰りジャンコ。
鍬ひとつ雨乞う歌や土を掻く

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