自遊通信 No.88(2024 夏号)
発 行 自遊学校 文/河原木憲彦 絵/野口ちとせ
自遊学校のお客さんに「ここの出身ですか?」と訊かれることがよくあります。「出身は青森県です」と答えると、いつも驚かれます。たまたま縁あって住むことになり、部屋(教室)が4部屋あったので、民宿をすることにしました。30年以上前のことです。
自遊学校になった旧竜ヶ迫小学校あたりは四国の一番端っこと言っても過言ではありません。それでも、こんな僻地にお客さんが来るの?とは思いませんでした。しばらく住んでいた東京と比べたら、圧倒的な自然の中にある広い空間は天国のようで、とりあえずやってみようと。
数年後、少しずつお客さんが増えましたが、もちろん現実は甘くありません。近所の人に教えてもらいながら、さつまいもを栽培し干芋を作って売ったり、日雇い仕事に出たりもしました。それから数十年経ち、自遊学校の営業期間は夏中心に変更しましたが、相変わらず夜はランプの前近代的な生活を続けています。
先日お客さんに「ここにいると、世の常識にとらわれずシンプルに生きていけるので、私にとっては天国です」と言ったら大笑いされました。こんな貧相な天国があるか、と思われたのでしょう。自遊学校は今年も7〜9月に開校します。
舞い上がり青に溶け込む鳶かな