No.71(2018 夏号)

発 行 自遊学校  文/河原木憲彦  絵/野口ちとせ 






昼下がり、校庭に猫が一匹座り地面を見ている。猫の名はジャンコ。そういえば朝から同じ場所で彼女はじっと地面を見ていた。夜になって、ジャンコが何かをくわえて帰ってきた。彼女が口から離して床に置くと、それは走り始めた。 モグラ? ジャンコが地面を見続けていた訳がやっとわかった。モグラが地面から顔を出すのを彼女は辛抱強く待っていたのだ。
猫は夜行性なので夜目がきく。猫の夜間視力はヒトの7倍だとか。それで真っ暗闇でも猫は不安がらない。しかしヒトはそうはいかない。ヒトは視覚情報に頼って生きているが夜目がきかない。だから暗闇をとても怖がる。

自遊学校を始める前から、ここでは電灯を使わず照明はランプにすると決めていた。小高い丘の中腹にある自遊学校周辺は緑に囲まれ自然の中にある。広い校庭には野鳥など小動物が集い、ヒトは脇役。電灯は明るすぎる。
ランプの灯りで30年暮らして、夜暗くなることに自分が安らぎを感じているのがわかる。雪が地上を覆い世界を白一色にするように、夜は世界を漆黒にする。そしてランプのわずかな光が暗闇に襞を作る。それは闇の美術館。ここでしか見ることができない作品が毎夜現れる。ランプに照らされ長く伸びたイスの淡い影、廊下の向こうに置いたランプがつくる丸い光輪。校庭に出ると、視界いっぱいの星々と天の河。闇は光を内包する。それに安心する。

   億万の光を包み夜が来る

  自遊学校は、例年通り、7・8・9月の夏期間、開校します。


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