No.54 (2012 夏号)

発 行 自遊学校  文/河原木憲彦  絵/野口ちとせ 





台風というとかつては8〜9月に来るものだった。ところが最近は6〜7月が多い。できれば来ていただきたくないが、お盆頃がピークシーズンの宿屋業にとっては、来るんだったら早い方がありがたい。その台風シーズンになり、早速6月19日に台風4号が室戸岬沖をかすめて行った。雨が強く降ったぐらいで周辺地域に幸い被害はなかった。やれやれ。

この時期は宿泊の問合せが多い時期でもある。電話の場合、お尋ねに答えながら、こう付け加える。
「ここは僻地なので、初めての方は明るいうちに着くようにしてください。」
さらにこう付け加えることもある
「この村には商店も食堂もありません。」
でも、たぶん都会の人は、こういう僻地の生活を実感できないだろうな。たとえば、何も買い物をしない(お金を使わない)日が殆どの日常生活を想像できる? ここでは現金より現物(野菜、魚など)の流通量のほうが多い。会話も多い。老人ばかりの寒村だが孤立した独居老人なんて存在しない。数日顔を見ないと、誰かが心配して訪ねていく。
先日サツマイモ苗を村人からもらって植えた。植え終わってお礼を言いに行ったら大きなタマネギとナスとサヤエンドウをまたいただいた。その家を出て道を歩いていると「魚いらんか? 船に取りにきたや」と別の村人に声をかけられた。
都会はいろいろ刺激があっておもしろいけれど、お金がかかる。電気代もかかる。ここの生活は刺激的ではないが、低消費であまりお金がかからない。こういうスローライフは村の老人たちとともに消えてしまうんだろうな、きっと。

  濃 緑 に ふ る 音 を 聴 く 夏 至 の 雨


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