No.39 (2007 夏号)

発 行 自遊学校  文/河原木憲彦  絵/野口ちとせ 



 

こここ数日、借りている段々畑にサツマイモのツルを挿している。といっても、自家消費用だから、たいした面積ではない。ツルは校庭に種芋を植えて育てた。この畑は道端にあるので通りがかりの村人が立ち止まって話しかけてくる。バイクで走ってきたメイホさん(70代後半、男)は、私が鶏糞を撒いて畝を作りすぐにツルを挿していたら、それを見とがめてこう言った。
「そんなしたら芋が黒くなるで。」
私  「自分とこで食べるんだから肌が黒くても赤くてもいいんよ。」
メイホ「肌が黒いのはいかんで。べっぴんの美しい芋をつくらな。」
私  「この頃べっぴんでもべっぴんでなくても、どっちでも良くなってきた。」
メイホ「そんなこと言ってちゃいけまい。まだ若いんだから。」
私  「もう若くないよメイホさん。老人クラブに誘われるくらいだもの。」
メイホ「そうか。そうか。まあ、ボチボチやりや。」
笑いながらメイホさんはまた走って行った。

しばらくして、今度はヨシカツさん(70代前半、男)が歩いてきた。
ヨシカツ「おお、やりよるか。」
私   「今頃こんなことしよる。他の皆さんはとっくに終わっている
ヨシカツ「ええわ。雨が多いから梅雨のいま時分が芋のツル挿しにはいいのよ。昔は麦の後に芋を植えてたから、このくらいのときに芋のツルを挿しおったものよ。それでも良い芋ができよった。」
私   「最近、漁はどうですか。」
ヨシカツ「いかん、いかん。魚がおらんもの。イサキも食わんし。全然釣れんようになってしもた。長生きしても良いことはないで。」
そう言いながらヨシカツさんは歩いて行った。

その後すぐに現れたのはセイコさん(70代後半、女)。
「カワラギさん、あんた昨日おらんかったろう。呼んだけど出てこんから玄関に野菜少しおいてきたが。」
私  「ああ、セイコさんだったのか。誰が置いてってくれたのかと思った。」
セイコ「おらんかったと帰ってからお父さんに言ったら、昼寝でもしてるんだろうと言うがよ。でも、あれだけ呼んで出てこんのやから、高知にでも出かけたんじゃないかと言うてたとこよ。」
私  「昨日もここで芋のツル挿してたんよ。野菜どうもありがとう。」

竜ヶ迫の住人は大半が70歳以上のお年寄りばかり。でも皆さん元気でしっかりしている。ほとんど余所に出かけず、今でも自給自足に近い暮らしだから、お金もあまり必要ない。もしかしたら究極のエコロジカルな生活を竜ヶ迫の老人は送っているのかもしれない。田舎人はタフでクールなのだ。



畑しごとを終えた夕方には、段々畑の上から上空を見上げたり、周辺の海を見下ろしたり、見慣れた景色に安心したりの小休止をとります。これくらいの高さからの絶景(?)がけっこう気に入っています。  
Chitose 





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