No.36 (2006 夏号)

発 行 自遊学校  文/河原木憲彦  絵/野口ちとせ 








高知は平地が少ない。自遊学校のある竜ヶ迫地区も山がすぐ海に接しているような地形で、そこを切り開いて作ったわずかな 平地に50世帯ほどがかろうじて暮らしている。平地が少ないと交通も容易ではない。竜ヶ迫に自動車が通れる道路がついたのは50年ほど前のこと。それまでは他地域との交通手段は船舶によった。時化の時は、急病人を戸板に乗せて山越えして病院に運んだこともあったそうだ。不便ではあったが、その頃は戸板を担ぐ若い衆がまだたくさんいた。それから半世紀以上たって、竜ヶ迫は僻地医療の対象地区になり月1度医師が回診に来てくれるようになった。
しかし、 残っているのは老人ばかり。段々畑も年々山に還っていくところが多くなった。そこに突然風力発電の風車建設の話が持ち上がった。竜ヶ迫地区から見上げる山の上に巨大な風車を立てるという。それも13基。部落の人たちからは反対の声 は出なかった。固定資産税3千万円が町にはいるし、どうせ使い道のない山だし、いいんじゃないの・・・、と。

しかし、その山は竜ヶ迫地区の水源になっている山で、巨大な風車がその上に建つのだから、水源への影響があるかもしれない。風力発電そのものは良いとしても、水地の真上に建てるのはどんなものか。そう言うと部落の人も肯くのだが、建設推進に反対もしない。結局、風車は建つことになり建設が始まった。いま自遊学校の校庭から山の上に大きな風車が6基見える。部落の老人は、こっちにも建ったあっちにもできたと、次々できる風車を見上げて喜んでいる。文明開化で鉄道を初めて見た人々もこんな風に無邪気に歓声を上げたのだろうか。巨大な風車はこの8月から稼働する
ことになっている。皆さんがおいでになる頃には回転する風車が山上に立ち並ぶ異様を見ることができるだろう。もっとも、その前に水が涸れたら民宿も営業不能になるだろうが、我々もトシでしんどいから、それはそれで良いかもしれない。ピース。

そんなこんなで、竜ヶ迫は人口が減る一方だ。空き家も増えた。最近、1千万円でそういう空き家を買い都会から移住してくる人がいるというのが竜ヶ迫で一番のビッグニュースになっている。田舎では空き家になってもそのまま放置しておく事が多い。お盆には帰ってくるからとか、定年になったら戻るとかいうが、結局廃屋になることが殆ど。竜ヶ迫ではいま1軒売り家が出ている。古屋だが年ほど前に屋根を葺き替えた家が畑付きで280万円とか。
海辺の僻地で晴耕雨読をしたい方、どうですか?



化石燃料は、いずれ枯渇するといわれています。省エネの努力で多少は時間稼ぎをしたとしても、あと数十年で化石燃料に依存した文明にも終わりがくるとか・・。
そういえば、自遊学校のランプの灯りの源は石油。これって、そもそもは省エネ、いや、低消費対策のつもりだったのに、ねぇ〜。
Chitose 




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