No.30 (2004 春号)


発 行 自遊学校  文/河原木憲彦  絵/野口ちとせ 









去年の秋に種をまいた畑の大根がみな薹立ちして菜の花畑になってしまった。それでも中には食べられるものもあって、最後の冬大根をかみしめている。今年の冬は例年になく変わった冬だった。無霜地域の竜ヶ迫に2度も雪が降ったかと思うと、実家のある青森県八戸は雪がほとんど降らず、車のタイヤを冬用に替えずにすんだ。桜の開花は例年より10日も早くなるとか。自遊学校の校庭の桜ももうすぐ咲き始めるだろう。いつも花見の時期になるとソワソワし始めるのは呑んべえの性か。いや、ソワソワし始めるのは私だけではないようだ。よく晴れた日の朝、校庭から空を見上げると、鳶が6羽上空を旋回していた。ずいぶん高く飛んでいる。そのうちの2羽が空中で衝突しそうになった。1羽がもう1羽に何度も突っかかっていく。けんかしてるのかと思って見ていると、そうではないらしい。突っかけられている方の
鳶は逃げるでもなく、突っかけてくる1羽と一緒に旋回し続けていた。どうも、じゃれ合っているようだ。そうか、雄が雌に求愛してるのか、とやっと気が付いた。
春だねえ。ソワソワし始めるのは動物だけではない。校庭の花梨(カリン)の木も花が咲き始めた。小指ぐらいの紅い花は春にふさわしく艶やかだ。畑や校庭を覆う草草も日一日と緑が濃
くなってきた。辛い季節を乗り越えて生き抜いたものたちがくなってきた。辛い季節を乗り越えて生き抜いたものたちが一斉
にソワソワしている。
  ◎ 
この春、我々にとってめでたいことが一つある。大阪の鶏小屋が完成したのだ。
敷地8坪。2階建て。鶏小屋にしても狭い。犬小屋ぐらいと言うべきか。しかしこれは鶏用でも犬用でもなく、実はれっきとした人間用の家なのだ。足かけ2年。たくさんの人の支援と協力で、挫折せずにここまで来れた。感謝甚大。おかげでおもしろい家になったと自画自賛している。この家はちとせさんの創作活動の拠点になる。春夏は自遊学校、
秋冬は大阪という大まかなスケジュールは変わらない。大阪の鶏小屋、じゃない人小屋は自遊学校と全く趣が違う。この家はしかし、我々の好みの両面を表している。自遊学校では表現できなかったことをこの家が表しているというか。
この家と自遊学校でやっと全体が完成したような気がする。もし大阪中央区空堀商店街あたりにおいでになる事があれば、お立ち寄りを。自遊学校のお客さんは特に大歓迎です。

  黄 毛 氈 (もうせん)  鶯 が 輪 を 描 く 花 も 見 ず


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