No.28 (2004 春号)


発 行 自遊学校  文/河原木憲彦  絵/野口ちとせ 








校庭を取り囲む10本の桜がいっせいに花を散らしている。絶えることなく地面に降り注ぐ薄紅色の小片が空間を満たす。この世がかけがえなく貴いものに思える時。そういう時をもてることを、 ありがたいと思う。そう思うのは後のことで、その時はたた呆然と佇み、しばしの奇跡に酔っているだけなのだが。桜の花の季節、自遊学校が最も美しい季節のひとつなのだけれど、来校者はいつもほとんどいない。もったいないような、贅沢なような。こんなにたくさんの花びらが、ほんの数人のために散っていくのか、と。に散る桜の花ほど美しいものは、めったにないから。
自遊学校の校庭の桜は、高知にしては遅咲きだ。四月初旬が見ごろ。近隣の桜は、その頃には散っている。
桜の木のせいかと、長年思っていた。のんびりした木性なにだろうと。だが、どうもそうではないようだ。ある友人が語ってくれたところによると、桜の開花は気温の寒暖の差が激しいほうが早い、のだとか。ただ単に暖かければ早く咲くのではない、そうだ。
そうか、1日の気温差がポイントなのか。そう言われれば、ここは暖流が流れる海に面しているため霜がおりない。だから、寒暖差は少ないはず。早咲きの桜は散るのも早く、花の時期が短い。遅咲きの自遊学校の桜はゆっくり咲いて、ゆっくり散る。そういえば、心なしか花が散っている速度も、他所よりのんびりしているように見えるのは気のせいか。 

  さくら花ちりぬる風のなごりには 水なきそらに波ぞ立ちける(紀貫之)


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6月は休校します。

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